近代化産業遺産 総合リスト


 
建物紹介例
<写真がここに入ります。(下は例)> 現在の建物名称(昔の建物名称)
住所(移設の場合、旧所在地) 建築年代
構造/階層 設計者/施工者
文化財指定・顕彰(ある場合)/撮影日/所有状況/
使用状況(建造当時の用途)
建物説明。(文末に参考文献ナンバー)

熊本県熊本市(上通下通地区)編

園田屋(同左)
熊本市南坪井町 明治11年(1878)
木造/2階建 不詳/不詳
/08.3/園田屋/商業施設(同左)
 上通りアーケード商店街の少し先に立地する朝鮮飴の製造元。上品な仕上げとなっており私が熊本に来たときよく利用する店舗のひとつです。基本的には江戸時代からの建物の流れを汲んではいるものの、大きな間口とガラス戸は近代の出発点が持つ独特の息吹を感じさせます。
 最初にこちらへ訪れたとき、店員さんとの会話の中で「とても古いですね、いったいいつ頃の建物ですか」と訪ねてみたところ、「そんなに古くないです。西南戦争の後に出来たものですから」との返事が。いや、十分過ぎるくらい、古いです。(34.)

旧熊本市役所玄関(同左)
熊本市千葉城町
(熊本市手取本町)
大正12年(1923)
鉄筋コンクリート造玄関車寄 倉田謙/佐伯組
昭和53年一部移設/08.4/熊本市/(同左)
 九州帝国大学建築課長倉田謙による珍しい福岡県外作品です。元の建物は倉田の作品の中でももっとも古典主義に則った、ずんぐりむっくりとした建物であったようです。さすがにこういう姿になってしまうと、さすがに想像の仕様もないのですが。まだ遺っているだけまし、というべきなのでしょう。
 市役所建て替えに際して、そのよすがを偲ぶものとして電車通りを挟んだ向かい側の高橋公園に移設され、東屋として使用されています。車寄部分のリユース方法としてはよくある形態ですね。(0.)

泉ビル(泉洋服店)
熊本市上通町 大正13年(1924)
鉄筋コンクリート造/3階建 増永組/増永組
/08.3/民間/商業施設(同左)
 商店街アーケード内にあるボリュームの大きな建物。熊本の上通りはアーケードもそれに負けないくらい大きなもののため、普段であれば一階部分、良くても二階部分がようやく見えるくらいですが、このようにある程度建物の全容を確認できます。洋服仕立てではかなりの老舗で、ここの仕立てた洋服でなければ着ないという有名人も多くいるとのこと。
 この写真にもあるように近年では一階部分は間貸ししていたことから、経営が厳しかったのでしょうか、、、アーケードにぽっかりと空間が出来た熊本の未来が気がかりです。(34.)

NTT西日本桜町ビル別館(熊本電話局)
熊本市花畑町 大正期
鉄筋コンクリート造/4階建 不詳/不詳
/08.3/熊本市/事務施設(同左)
 街中に遺る洋風事務ビル。増築のされ方を見て、うっかり旧熊本貯金局と間違えたのはここだけの話です(それはないだろ)。貯金局と比べると、多少様式にこだわりの残った造りとなっていますが、これはこれで景観に寄与していることは間違いないでしょう。
 現役施設として今も使用されている(しかも所有母体が同じ)ことは、そう多くはありません。階高のある事務施設であったから遺されたと考えるべきでしょうか。などと考えている内に解体の憂き目にあってしまいました。残念です。(34.)

仏蘭西料亭赤煉瓦(製氷倉庫)
熊本市南坪井町 大正期か
煉瓦造/2階建 不詳/不詳
/08.3/民間/(同左)
 正面は改装され、他三面には建物が建て込んでいる市街地にある作品なので、写真が悪いと言われても撮りようがありません。元々は製氷倉庫、現在はレストランに転用され、営業しています。
 赤煉瓦ネットワークが発行した本の中に「日本赤煉瓦建築番付」という建築の先生方がしゃれで作った番付表があるのですが(どこかのブログで「権威ある」なんて事書いてありますが、作った側が恐縮するでしょう)、その中で「前頭」にカウントされている建物でもあります。これで前頭、、でいいのでしょうか。よく分かりません。(a.)

手取カトリック教会(同左)
熊本市上通町 昭和3年(1928)
鉄筋コンクリート造/平屋建 鉄川与助(大工)
/04.6/民間/教会(同左)
 熊本市街の中でもかなり中心部に位置しており、向かいには鶴屋百貨店があるという繁華街のまっただ中で、ぽつりと以前からの姿を守り続けている建物です。大規模な建物群に囲まれているため、スケール感がつかみにくいですが、竣工当初は大きな姿を周囲に見せつけたのでしょう。
 内部は折り上げ天井で、敷地内施設も相当の年季を感じさせます。見せ方によれば、都心内観光の中核ともなりうるポテンシャルを有しています。(34.)

長崎書店塔屋(同左)
熊本市上通町 昭和5年(1930)頃
木造塔屋 保岡勝也/不詳
/08.3/長崎書店/静態保存(商業施設)
 かつてあった洋風建築の塔屋を移設して現在も遺っているものです。が、その遺され方は新築した鉄筋コンクリート造の建物にちょこんと載せるといった形式で、また建造当初の丈と全くそぐわないため、かつて通りを歩いていた人たちには必ず見えていたであろうその奇妙な塔屋は、殆ど顧みられることがありません。
 上通りアーケードに面した書店自体はかなりセンスの良い品揃えで、そこに色を添えるのが古くからあることを示すこの作品ではないか、と思うのですが、、、少なくとも、保存されていることには、素晴らしいと言うほかないのですが、使い方がもったいない、と思うのは私だけでしょうか。(34.)

熊本市役所花畑町別館(熊本貯金局)
熊本市花畑町 昭和11年(1936)
鉄筋コンクリート造/4階建 山田守/大倉土木
/08.3/熊本市/事務施設(同左)
 山田守によるモダニズムの傑作。4階部分は後年の増築によるものですが、あたかも元々そうであったかのようにトータルプロポーションが成立・調和しているところがますます面白いと言えるでしょう。逓信省系作品の中でもトップクラスの作品だと断言します。
 近年解体の話が出てきており、心配な建物のひとつでもあります。これだけの作品をあえて取り壊すという話が出てくること自体、不思議でならないのですが、これも戦争時の空襲被害が少なかった事による余裕でしょうか?(34.)


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