近代化産業遺産 総合リスト


 
建物紹介例
<写真がここに入ります。(下は例)>旧阪急大阪駅内装 現在の建物名称(昔の建物名称)
住所(移設の場合、旧所在地) 建築年代
構造/階層 設計者/施工者
文化財指定・顕彰(ある場合)/撮影日/所有状況/
使用状況(建造当時の用途)
建物説明をくどくどと。(文末に参考文献ナンバー)

大阪市北区編

日本銀行大阪支店(同左)
大阪市北区中之島二丁目 明治36年(1903)
煉瓦・石造/2階建 辰野葛西建築事務所/直営+大林組(基礎部分)
/03.10/日本銀行/金融機関(同左)
 中之島の代表的景観。ベルギー国立銀行をモデルとした建物だそうです。もっとも日本の金融システムがベルギーを規範にしていることとか、そもそも日銀本店にそっくりなこととかを考えると、単に「日銀様式」と言った方が正確だと思います。
 解体か保存化で揉めた建物のひとつです。もっとも、中之島地区に遺る建物群でその論議を免れた建物は皆無でしょう。日銀支店の中では最大の建物ということもあり、後背部、西側敷地に高層棟を増築することで現在にその姿を留めています。(35.)

大阪府立中之島図書館(同左)
大阪市北区中之島一丁目 明治37年(1904)
石造・煉瓦造/2階建 住友本店臨時建築部(野口孫市)
/久保田小三郎
/03.10/大阪市/文化施設(同左)
 見事なまでの古典調。しかも忠実に良質な作品としてた仕上げられている点が、後年高く評価された原因でしょう。ここ中之島地区には、日銀大阪支店にこの作品、更に中央公会堂と重要文化財クラスの作品がどんどんと立ち並び、近代の代表的商都大阪を体現していると言えます。コリント式のオーダーで飾られる玄関部分は、図書館の「知の都」的要素を体現した姿だと思います。
 建築的な価値ばかりではなく、図書館としての用途でも周辺に関わる多くの方々に親しまれている建物です。致命的な損傷を受けない限り、長く愛され使われ続ける作品でしょう。内装も見所満載です。中之島は実に贅沢な建築コースになり得ます。(35.)

大阪市中央公会堂(同左)
大阪市北区中之島一丁目 大正7年(1918)
鉄骨煉瓦造/3階建 辰野片岡建築事務所(岡田新一郎)/清水組
国指定重要文化財/03.10/大阪市/文化施設(同左)
 煉瓦造りの代表的作品ということもこの建物を表すのにやぶさかではないですが、やはり文化財級建築の保存方法を提示したという点で、確固たる地位を確立したトップクラスの近代化遺産と言えます。外壁はきれいに磨き上げられ、内装の豪壮さはかくやといわんばかりです。ステンドグラスとか、玄関ホールとか、特色点はいくつもあるので、これはもう一回見てみるほかないと思います。
 その後の公会堂建築に大きな影響を与えた作品で、地方都市に遺る昭和期の公会堂はどこか「大阪」に似た顔を持っています。(35.)

旧毎日新聞大阪本社正面玄関(同左)
大阪市北区堂島一丁目 大正11年(1922)
鉄筋コンクリート造モニュメント 片岡建築事務所/大林組
/07.1/毎日新聞社/静態保存(事務施設)
 大阪発祥の二大新聞社の内、毎日新聞社が建てた大規模オフィスビルディングでした。バブル後期の開発の波にもまれる形で、周辺の建物群と併せ再開発が行われ、現在は堂島アバンザという空間の一角にこのような形として遺されています。
 この玄関だけで当時の姿を想像すると言うことはさすがに厳しいと言わざるを得ません。ただ、このスタイルから見ても、もしくは現地の案内板から見ても様式に則ったいかめしい事務ビルであったと言えるでしょう。よすがを偲ぶことが出来るという点では評価に値するでしょうか。(0.)

ダイビル本館(大阪ビルヂング)
大阪市北区中之島三丁目 大正15年(1926)
鉄筋コンクリート造/8階建 渡辺節建築事務所/大林組
/07.1/ダイビル/事務施設(同左)
 中之島にある大規模開発の中でかろうじて大大阪時代の雰囲気をとどめ、またその素晴らしき時代を十二分に感じさせる西洋建築です。周囲には既に超高層建築が立ち並び、このビルももはや幾ばくもない余命との話を聞き及んでいます。これ以上、大大阪時代の栄光をかき消してしまうことは、町のためにもならないと思うのは私だけではないと思います。
 建物にお金をかけられた時代の微細にわたるデコラティブな意匠には、感服せざるを得ません。現代これだけの質を持った建物が果たして造れるのか、疑問です。(0.68.)

中央電気倶楽部(同左)
大阪市北区堂島浜二丁目 昭和5年(1930)
鉄骨鉄筋コンクリート造/4階建 葛野建築事務所/大林組
/07.1/社団法人/余暇施設(同左)
 スパニッシュスタイルのビルで、当初から中央電気倶楽部が社交施設として使用し続けています。さすが倶楽部建築だけあって、ただ都会にある事務ビルとはちょっと趣が異なります。外観のタイルはもちろんのこと、斜線制限をこのまま屋上庭園として活用したり、窓周りにも見る人を飽きさせない趣向が凝らしてあります。
 一番目立つと言えば、4階上部にある壺でしょうか。この4個置かれている壺で、建物の印象をすっかり奪ってしまうくらい、インパクトを持っています。「壺のあるビル」という通り名で通用してしまうそうです。まさに都市の財産でしょう。(68.)

朝日ビル(同左)
大阪市北区中之島三丁目 昭和6年(1931)
鉄骨鉄筋コンクリート造/10階建 石田純一郎(竹中工務店)/竹中工務店
/07.1/朝日新聞社/事務施設(同左)
 大正期の毎日新聞社ビルとは対照的な、実にモダンな造りとなっている朝日新聞社の本社ビルです。角地にあり面取りを行いながらも、様式建築にあった壁面を重視したスタイルから、窓を広くとったモダニズムに移行していく過程にある、名作のひとつと言えるでしょう。
 向かい側にある自社ビルと併せ再開発構想が持ち上がっています。建物はいつか更新されることは時代の必定ですが、こうも早く大大阪時代の建物を全て建て替えようという姿勢には疑問を覚えます。まして、それが新聞社ですから、、、。(0.68.)

大江橋(同左)
大阪市北区西天満−中之島 昭和10年(1935)
鉄筋コンクリート造 大谷龍雄/大林組
/03.10/大阪市/道路橋(同左)
 都市高速の下に隠れているのがもったいない作品。モダニズムの色を残しながらも独自の意匠を強く印象づけます。中間部分の柱は、灯籠にも似た意匠を持ちながら、モダンです。
 石材に曲線を与えながらアーチ意匠を全体的にちりばめる手法はこの当時標準的に用いられたもので、この橋脚にもくどいくらい用いられています。その中で電灯部分が持つ「堅い輪郭」は、この建物に引き締まったインパクトを与えます。中之島と梅田とを繋ぐ重要な幹線のひとつとして、文化財的価値を持ちながらも頻繁に使用されている、名作です。(35.)

阪急ビルディング(同左)
大阪市北区角田町 昭和11年(1936)
鉄骨鉄筋コンクリート造/7階建 竹中工務店/竹中工務店
/03.10/阪急百貨店/商業施設(同左)
 モダニズムの薫陶を受けながらも、昭和戦前期の特徴を色濃く残した作品。上屋の殆どの部分は阪急百貨店本店として使用されています。梅田の中心部分を象徴する景観のひとつです。
 外観にも特徴的なものはありますが、最も重要視すべきは元阪急梅田駅ホームとして作られた内装にあります。アールデコ的な柱と古典意匠に忠実な旧ホーム。1階部分をそぞろ歩くだけでも気分はさながら美術館、実に豪奢な空間です。
 近年改築計画が持ち上がっています。現在ある建物的価値をどのように継承できるのか、興味の湧くところです。(35.)

大阪中央郵便局(同左)
大阪市北区梅田三丁目 昭和14年(1939)
鉄骨鉄筋コンクリート造/7階建 吉田鉄郎/清水組
/03.10/日本郵政公社/事務施設(同左)
 これぞ「近代化遺産」というべき大阪のメルクマール。東京中央郵便局と並び、近代建築を日本が受容したその成果たる名作です。とはいえ、現在では一見同じような建物は数多く見受けられるようになりました。永久建築の考え方を継いでいるこの当時の建物ですから、質は模倣作と比べるべくもありません。
 建物の存在感はそのスタイルが完成されていることを表します。大阪駅にあって他の建物とはやはり一線を画しています。西洋の壁の文化とは異なる、日本建築の柱と採光を重視した独自の文化を建物で表した、後世に伝え遺すべき作品であると断言します。(35.)


戻る