近代化産業遺産 総合リスト


 
建物紹介例
<写真がここに入ります。(下は例)> 現在の建物名称(昔の建物名称)
住所(移設の場合、旧所在地) 建築年代
構造/階層 設計者/施工者
文化財指定・顕彰(ある場合)/撮影日/所有状況/
使用状況(建造当時の用途)
建物説明。(文末に参考文献ナンバー)

熊本県八代市編

松浜軒(同左)
八代市北の丸町 江戸末期
木造/2階建 不詳/不詳
/04.6/松井氏/住居(同左・静態保存)
 八代城主であった松井家の住居・庭園で、現在も松井家の住居であることがポイントの観光施設。技術的な部分ではなく、八代の歴史を語る上で欠かすことの出来ない施設ということでここに採りあげてみました。
 江戸時代からの武家屋敷にふさわしく、2階部分から見える庭園はかつては広がりを持って遙か八代海を望むことができたでしょう。現在は海岸線は遠ざかり、さらに名の由来になっている松林さえも徐々に枯れてきているとのこと。庭園を維持することの難しさを見せつけられたような気がします。(23.)

旧郡築新地甲号樋門(同左)
八代市郡築 明治33年(1900)
石造水門 不詳/不詳
国指定重要文化財/04.6/八代市など/水門(同左)
 長く伸びた石の造形に煉瓦で巻かれたアーチが抱かれるようにつくられています。自然石が持つ周囲にとけ込むような落ち着きと一級の土木構造物が持ちうる、はっと冴えるデザインは見事に同居し、はるばる訪れた人に満足感を与えます。
 登録文化財ということでつい先日この場所を訪れたのですが、帰ってみれば重要文化財になっていました。道路の沿線上にあり、うっかり通り過ぎてしまうような立地にありますが、今後サイン整備が進むもの思われます。(34.)

シャルトル聖パウロ修道院記念館(同左)
八代市通町 明治33年(1900)
木造/2階建 不詳/不詳
国登録有形文化財/08.8/宗教法人/静態保存(宗教施設)
 明治30年代の建物ながら、長崎に見られる明治初期の建物形態によく似ており、一連の流れの中で造られた建物と言えるでしょう。報告所内では熊本市内に遺るジェーンズ邸との類似性を指摘されています。ジェーンズ邸は長崎の大工が建てたと言われているので、同じような造りとなるのは、当然でしょう。
 現在は八代白百合学園内の記念施設として保存されています。明治期におけるキリスト教布教の歴史を知る上で、貴重な建物でしょう。(34.)

JR八代駅危険品庫一号(同左)
八代市萩原町一丁目 明治41年(1908)
石造/平屋建 不詳/不詳
/08.8/JR九州/交通施設(同左)
 建物敷地の端っこ部分に、注意してみないと気づかないレベルで建てられている石造倉庫。瓦屋根の外観こそ一見武骨ですが、軒部分はS字型の曲線(サイマレクタ)を描いており、なかなか見せる造りとなっています。
 恥ずかしながら、「肥薩線の近代化遺産」の既述を見るまで、この意匠をサイマレクタと呼ばれること、知りませんでした。いやはや、我流の勉強では穴ばかり多くていざというとき恥をかくことになります。何とも困りものです。(74.)

旅館金波楼(同左)
八代市日奈久上西町 明治43年(1910)
木造/3階建 不詳/不詳
/04.6/金波楼/宿泊施設(同左)
 日奈久温泉の代表的建築物。古写真が数点残存していますが、数度の改修・増築が行われながらも外装内装共に旧状をとどめていると思わせるところに、矍鑠たる温泉街の真骨頂を感じさせます。
 内装の各所に洋風意匠が従来技術と融合されています。居心地としては、古くからある木造小学校舎に合宿に来たような、わくわくした意外性(懐かしさを覚える方の方が多いでしょう)に溢れているように感じました。(34.) 

JR八代駅(同左)
八代市萩原町一丁目 大正5年(1916)
木造/平屋建 不詳/不詳
/04.3/JR九州/不詳/不詳
 正面部分に数度にわたる改装が施され、一見するだけでは古い建物とは想定できないような造りになっています。切妻部分を見てみると、なるほど古い建物であることが分かりますが、そこまで注意深く見学する方は少ないでしょう。
 駅後方には日本製紙の工場が見え、八代の特徴的な景観を演出しています。近代的な工場の煙突と木造建築とのコントラストは、高度経済成長期まっただ中の工業都市にみられるダイナミズムを感じさせます。(34.) 

肥薩おれんじ鉄道日奈久駅(同左)
八代市日奈久塩北町 大正12年(1923)
木造/平屋建 不詳/不詳
/04.6/肥薩おれんじ鉄道/不詳/不詳
 建造時期は八代駅より若干下りますが、木造駅舎の持つ「味」といったものはこちらの方に軍配が上がります。改装の仕方がかなりぞんざいなため、実際の造りよりも安くみられがちですが、建造当初はなかなか立派な作品ではなかったかと思います。
 日奈久温泉の持つ「非日常空間」へと誘う演出効果として、この駅舎の重要性は今後増すものと思われます。改装の仕方によってはコミュニティセンターとしても使い甲斐のある空間になるのではないでしょうか。(34.) 

郡築新地新設第一号樋門(同左)
八代市郡築 昭和13年(1938)
石造水門 不詳/不詳
国登録有形文化財/04.6/八代市など/水門(同左)
 昭和期の水門と言うことで、基礎部分にはコンクリートが用いられているようですが、全体の構造としては石材を多く用いています。導流口と道路接続部分の壁とでデザインに若干の違いが見られ、それが作品の中で大きなアクセントとなっています。
 長らく使用され続けたためか、全体的に変色が激しく、建造当初制作者が望んでいたであろう無機質さは目立たなくなり、壁面部分の様式風意匠だけが目立つ格好となってしまいました。(34.55.)

メルシャン株式会社八代工場(同左)
八代市三楽町 昭和14年(1939)以降
木造/2階建 不詳/不詳
/08.8/メルシャン/工場施設(同左)
 見た感じ古い工場だな、と言う印象を持っていましたが、戦後初期くらいと思いこんでいました。戦前期からあった工場で、当初はアセトンやブタノールを製造していたようです。ブタノールは現在化石燃料に変わる代替物質として注目を浴びているもので、時期的なことを考えると、創業当初は軍需工場であった可能性を強く持ちます。
 建物内は大分設備更新が行われているようですが、事務所建築をはじめ古くからあるであろう施設が多く現存しています。(メルシャンウェブサイト.)

第一映画有限会社(同左)
八代市萩原町二丁目 昭和27年(1952)
木造/3階建 不詳/不詳
/08.8/第一映画/商業施設(同左)
 かつては繁華街の駅前に必ずあったであろう、映画館建築。正面からのインパクトを強く持たせる造りとなっており、往時は映画の宣伝が正面看板に堂々と描かれていたことでしょう。
 常設ながら、一月の中で数日上映するという形態を取っているようですが、創業して50年を過ぎ、ここまで来るともう都市の財産のひとつ。現役の施設であり続けていることに意味があると言えます。現在でも何となく、映画全盛期の雰囲気をにじませる、気になる建物です。(74.)


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